Foto © Hiroshi Ueda

東日本大震災で被災した知的障害をもつ入居者50名の福祉施設である。川内村の既存施設が福島第一原発の被害を受け、過酷な避難生活の末、田村市や地域住民の暖かい支援により、この地に応急仮設建築物を建てることになった。避難生活で疲弊している入居者、職員の方々に、一日も早く安住の地をつくることを最優先した上で、木の温かみある落ち着いた住まいをつくること、日常生活にリズム感を与える多様な場をつくることを大切にした。
具体的には、一般流通木材の金物工法で構造と仕上げを兼ねた大規模な木造平屋とし、手の触れる内壁仕上げに地産の田村杉を用いた木の温かみある空間を実現している。また、生活の場と作業・訓練の場に適度な距離感を持たせることにより、日常生活に変化を与え、様々な性格の庭で建築を包み込むことにより、内外が連続した生活環境の豊富化を試みた。
空間構成は、個室から共有部までの空間をグラデーション状につなぎ、様々な活動単位に適応した居場所を、個々の入居者が選択できる「コネクティング・ホール・システム」と名づけた提案をしている。入居者は男性30名、女性20名で、10名単位の各ユニットを男女別々の大きなリビング、共有の食堂へとつないだ生活の場と、作業訓練室と管理諸室のある社会性の高い場で構成している。
各ユニットは大きなリビングに近く、引き戸を開け放てば多床室にもなりうる見守りとコミュニケーションに適した個室の領域と、その奥にあるプライバシー確保を優先した個室の領域からなる。これら個室の平面配置を交互にずらすことで、ユニット内の小さなリビングに入隅をつくりだし、みんなと一緒にいながらクールダウンできるひとりの居場所を生み出している。

周辺の山並みと呼応した切妻屋根の重なりは、その隙間から柔らかな自然の光と風を室内に導く。個室に囲まれたユニット中央には、福島の伝統的な置き屋根を環境装置として再解釈した高窓が設置され、共有部の窓開閉だけで重力換気が行える。外壁は土壁のような吹付タイルとし、周辺環境に馴染む「和」の質感を大切にした。田村市の気候風土に適した切妻屋根の重なりがつくり出す集落のような姿が、新しい村里の風景として、この地に根付いていくことを期待している。

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あぶくま更生園

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Sede
福島県田村市, Japan
Anno
2015

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